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ピンクにブルー、グリーン、オレンジ。春の陽気に誘われたかのようなカラフルな磁器。相反する色もひとつの器の中に見事に共存しています。一体全部で何色あるのでしょう?
「今扱っている釉薬は100以上。これらを調合して新しい色が生まれることもあります」
器の作者、竹村良訓さんはそう話します。他にはない珍しい色使いで陶芸店だけでなくインテリアやアパレルショップからの引き合いも多い、今注目の陶芸家です。
じつは竹村さんは理科、なかでも化学が大好きで、大学は理工学部に進むつもりでした。それが高校の美術の先生の熱心な勧めで美術大学に進学し、最終的に陶芸の道に。理系の血が騒ぐのか、釉薬を調合したり焼きの温度を変えたりと「実験」することが楽しくてしかたがないよう。
「でも陶芸を始めた頃は使い勝手重視で、渋い色のものを制作していました。その後ルーシー・リーやベルント・フリーベリの色鮮やかな作品に触れ、自分でもつくってみたいと思ったんです。また僕には姉が2人いて、ファッション誌が常に家にあるような環境でした。それを眺めたり『ファッション通信』という番組を観るのが好きで、ファッションの自由さから受けた影響も大きいと思います」
そして失敗を重ねながらの釉薬の研究と生来の色彩感覚によって、どこにもない美しい色の器が誕生しました。今も新しい技法に精力的に挑戦するなか、目指しているのがアートピースのような器。とはいえ芸術品のように自身の名を残したいわけではないと言います。
「理想は愛着を持って長く使われ、受け継がれていくもの。ずっと先の未来に『誰がつくったかわからないけど、いいよね』と言われるようなものをつくりたいですね」
今でもずっと手元に置いて愛でたくなる竹村さんの器。次に登場する作品も、きっと長く受け継がれていくものに違いありません。
ここ1年ほど力を入れて研究中という、練り込み技法によるマーブル模様のシリーズ。素焼きの生地に色を乗せる釉薬とはまったく技法が異なり、色をつけた粘土を練り込んで模様を描いていきます。「まだ自分の作品としては手探り中で、目下いろいろ試しているところ」と竹村さん。
色の組み合わせは、素焼きの器を眺めながら大体直感で決めるそう。できあがりを予想することもあるけれど、時に釉薬が混じり合ってまったく新しい色が生まれたり、地の釉薬によっては色が抜けて白くなったりするのも面白いところ。
ひとつとして同じものがない竹村さんの器。相反する色もためらいなく同居させます。色の乗せ方も多彩で、掛け分け(2種類以上の釉薬を部分的にかけて発色に変化をつける)や吹き付けのほか、飛び散らせたり釉薬の中にくぐらせたり重ねて塗ってみたり、練り込んでみたり。まるで服を着せるように色を置いていきます。シンプルな形が色の美しさをさらに引き立てます。
1980年千葉県生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科にて木工を専攻中にサークル活動で陶芸に出会う。2003年、東京藝術大学大学院保存修復学科(工芸)修了。古陶磁研究のかたわら作陶に着手。08年に陶房「橙」を開設。陶芸教室には遠方から通う人も多い。展示会や販売店など最新の情報は本人のインスタグラム(@takemurayoshinori)をチェック。
La Finestra Vol.24より転載