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窓は、いつも好奇心のかたちに見える。光を取り込み、開いては閉じて、距離感も自由。旅先では、目で窓を追いかけると街のリズムが見え、足取りを軽くしてくれる。日常でも窓へのこだわりが若干強めの私は、アルミサッシの味気なさを嘆き、アイアンをイメージして黒いペンキ片手に窓枠を塗り始めたこともあった。物件探しの条件は断然、駅近より窓枠だし、いつか窓枠だけで素敵な小屋をつくれたらという夢もある。
窓の何に惹かれているのか。好みの窓もあるが、感覚的なところでは、窓があると、あっちとこっちが生まれ、同じ風景の中にいる時以上にその風景を意識し、この世界と慣れ合いにならずにいられる。完全に隔てられる壁とは違って、自分とは違う何かに興味を集中できる装置としての窓が、とても好きなのだ。
窓は時間をくれることも大きい。大人になるほど砂時計の速さが増すように感じられるのに、窓際にいると、外を見やるうちに規則正しく進む時間から少し逸脱できたり、いつかの時間がふっと心の表層に顔を出し、時間軸が一つではなくなる。窓はおおらかだ。
バスやトラックの窓の高さには今なおワクワクするし、富士山の山小屋の窓から見た空はあまりに星がきれいで、深夜2時に慌ててコンタクトを入れ直した。ラジオの生放送スタジオの窓からは、二度と同じ東京を見ない。そうやって、日々眺める窓の向こうに新たな窓も見え隠れするから、どうにも窓がとまらないのだ。
記事内の写真は、毎週月~金曜にナビゲーターを務めるJ-WAVEラジオのスタジオの窓からの風景。同じ窓でも、日々異なる東京の景色が広がります。
写真・文:クリス智子
ラジオパーソナリティ。現在、東京のFM局J-WAVEにて『GOOD NEIGHBORS』(月~木曜13:00~16:30)、『CREADIO』(金曜26:30~27:00)のナビゲーターを務めるほか、TVナレーション、執筆などで活躍中。
La Finestra Vol.21より転載