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自宅の窓からの雨の日の景色。雨粒に濡れていつもより濃いグリーンに染まった木々の様子もまた美しい。
窓は、光と雨を享受するためにある。特にこの季節は、春秋冬と違い、大きくなった木々の葉にあたる雨の音で風景に音が生まれ、癒され方も格別だ。
休みの日に予定を入れていたら話は別かもしれないが、一日中家に居られる日の雨は、雨好きにはたまらない。朝の、まだ寝ていてもいいよと聞こえる声も、昼間の放っておかれ加減も、夜に一日を振り返ると、ぽっかりどこかへ旅でもしたかのような感覚も。家に天窓でもあれば、かなりの時間を私はその下で過ごすだろう。
雨が窓ガラスを伝うさまを眺めていると妙に落ち着く。1/f の揺らぎ、自分の命のリズムとの同調。規則的なようでそうでもない自然界のリズム。それを音で絶え間なく聴ける雨の日は、「人間は自然の一部」という摂理を、そうだ、そうだったと皮膚感覚で悟れ、安心するのだろう。窓は、上から下へという雨の動きを可視化してくれるが、その雨の動きに、指や鍵盤が上から下に動くピアノの音はやはりよく合うし(キース・ジャレット最高)、そんな音楽を聴きながらキッチンに立ち、上から下へと包丁を動かすのもいい。
小さいころ、雨が降ると友達と数個の傘をつなげて、丘の上の空き地で基地ごっこをした。雨の音は耳のすぐそばで鳴り、眩しい新緑を手前に、遠くまで見渡せる感じが大好きだった。
雨になると、私は我が家の深めのひさしがついた窓を網戸にして開け放つ。ふうっと流れこんでくる空気が、あの日と変わらないことを喜びながら。
写真・文:クリス智子
ラジオパーソナリティ。現在、東京のFM局J-WAVEにて『GOOD NEIGHBORS』(月~木曜13:00~16:00)、『CREADIO』(金曜26:30~27:00)のナビゲーターを務めるほか、TVナレーション、執筆などで活躍中。
La Finestra Vol.24より転載