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障子や畳などの“舞台装置”の力も相まって、四季折々の風景が絵画のように映えるクリス家の和室の窓。「やっぱり和室はいいな」と思わせてくれるひとときです。
現在の住まいに出会うまでは、一から家を建てるか、中古物件をリフォームするか、迷っていた。
ぴんときたらと言いながら、こないままに3 年ほどが過ぎたある日、今の家を見て、中古物件をリフォームすることにしたのだが、ぴんときた、その決め手の一つが2階の和室だった。
正直、大人になって自分で住まいを借りて暮らすようになってから、すっかり縁遠くなっていた和室。実家や祖父母のいる田舎に帰ったとき、はたまた泊まった旅館で「畳っていいなぁ」と大の字になって集中補給する程度だった。
さきほど決め手になったと言ったが、内覧時、和室の窓景が、谷戸の緑を望む実にのびのびしたもので、これは晴れでも雨でも窓辺に座りたくなるだろうなと思った。家具がない分、生活感も控えめな旅館のような空間に、和室の持ち得る「自由」を全身で感じたのだ。
住んでみると、和室の窓はたしかに、他の部屋の窓とは異質なこともわかる。光と影が畳で戯れる朝の様子は格別の癒しだし、梅のころは、満開の梅を鑑賞したくて、障子は開けっ放し。満月も、うまい具合に和室の窓から拝めるので、特に晴れの満月の夜は、そそくさと帰宅する。何もないように見えて、何時も幸せがこぼれ落ちてくる。むしろ、こぼれ落ちる場所があるように、と思うようになった。我が家の、静かでドラマティックな劇場空間。
それにしても、呑気に喜んでいたが、よくよく考えるとこれは偶然ではなく、茶人でもあった前オーナーの粋な仕業なのかもしれない。他を受け入れ、愉しませる素敵な窓に、日々、感謝の気持ちが増すのである。
写真・文:クリス智子
ラジオパーソナリティ。現在、東京のFM局J-WAVEにて『GOOD NEIGHBORS』(月〜木曜13:00〜16:00)のナビゲーターを務めるほか、TVナレーション、執筆などで活躍中。
La Finestra Vol.26より転載